東京高等裁判所 昭和46年(う)3528号 判決
被告人 西墻英夫
〔抄 録〕
所論(注 控訴趣意第一点)は、刑法第二〇八条の二は、処罰の実質的、合理的根拠に乏しく、少なくともその規制が広きにすぎ、その構成要件たる「兇器」、「準備」の意義概念がきわめてあいまい不明確であるから、憲法第三一条に違反し無効であるという旨の主張である。
しかし、刑法第二〇八条の二の兇器準備集合罪の法益は、個人の生命、身体または財産の安全であるとともに、公共の平穏でもあり、同条にいう「兇器」とは、その性質上、または用法上、人を殺傷しうべき器具を意味し、また、同条にいう「準備」とは、兇器を必要に応じて、いつでも本罪の加害行為に使用しうる状態におくことをいうのであって、所論のように刑法第二〇八条の二の規定が、処罰の実質的、合理的根拠に乏しく、その規制が広きにすぎ、兇器、準備の概念がきわめてあいまい不明確であるということはできないから、所論憲法第三一条違反の主張は、前提を欠き、論旨は理由がない。
所論(同第二点)は、原判決は、本件の竹竿、コーラ、牛乳の空びん、石塊を刑法第二〇八条の二の「兇器」にあたるとして同条を適用したが、これは法令の解釈適用を誤ったものであって、憲法第三一条に違反するという旨の主張である。
しかし、刑法第二〇八条の二にいう「兇器」には、用法上、人を殺傷しうべき器具をも含むことは前記第一点において説示したとおりであり、原判示竹竿(二メートルから二メートル半位の長さ)コーラ、牛乳の空びん、石塊は、その本来の性質上人を殺傷するために作られたものではないが、用法によっては人の生命、身体または財産に害を加えるに足りる器物であり、かつ、二人以上の者が他人の生命、身体または財産に害を加える目的をもって、これらを準備して集合するにおいては、社会通念上人をして危機感を抱かせるに足りるものであるから、刑法第二〇八条の二にいう兇器に該当するものと解するのが相当であり(昭和四四年(あ)第一四五三号同四五年一二月三日最高裁判所第一小法廷決定の趣旨、刑集二四巻一三号一七〇七頁参照)、また、原判決の弁護人の主張三に対する判断(第三点)も正当として是認することができる。したがって、原判決には、所論のような法令の解釈適用を誤った違法はなく、憲法第三一条違反の主張も、その前提を欠くことに帰するから、論旨は理由がない。
(真野 吉川 岡村)